ここでは、技術的、物理的な苦労に絞ってお話しさせていただきます。
技術的に多くの人がぶつかりやすい壁は、「デジタルの壁」だと思います。
イラストのお仕事は、絵を描くだけでなく、大抵それが何かに「印刷」されたり「掲載」されたりします。その時どうしても、元のデータをデジタルで作っておく必要があります。普通に描いた絵をスキャンしただけのJPEGでは、例えばペットボトルのラベルに印刷するとか、絶対できないですよね。
そのため「イラストの仕事=デジタルイラストの仕事」と言ってもいいくらい、このお仕事は、ほとんどデジタルで進行します。なので、デジタルの技術が必要なのですが、これが結構難しいのです。
例えば、タブレットは未経験者の方が思うほど簡単には描けません。ペン先と実際の絵が離れているため、とても違和感があります。
プロが使う高級タブレットを買っても、当分の間は手描きに追い付けないでしょう。タブレットも一つの「画材」であり、たとえば油絵具を買ってきても、すぐに油絵を描けるわけではないように、タブレットも買うだけでなく、練習してマスターする必要があるのです。
そして、タブレットだけでなく、Illustrator、Photoshopなどの定番ソフトを使いこなす技術も必要です。これらで画像を制作するのも当然大変ですが、もっと複雑なのは「入稿」です。
入稿というのは、データを印刷所などに送ることですが、この時、印刷が1色か2色か4色(フルカラー)かなどのパターンで、データの作成にも色々なルールがあり、大抵のイラストレーターは、最初にここで、何かしら失敗をします(笑)。
こうして、「絵と全然関係ないこと」も仕事のために苦労して覚えながら、イラストレーターは成長していきます。大変なことも多いですが、スクールとか趣味の絵では絶対学べない、絵の本当のよろこびを知ることもできるので、楽しい生き方だと思います。